放射線モニタリング情報Monitoring information of environmental radioactivity level
原子力規制委員会

緊急作業時における被ばく線量限度について(放射線審議会)

平成23年3月26日
放射線審議会

当審議会では、人事院総裁、厚生労働大臣及び経済産業大臣から、緊急作業時における被ばく線量の限度を250 mSvとする諮問に対し、妥当であるとの答申を行ったところである。
この理由は以下のとおりである。

わが国では、緊急作業従事者の被ばく線量の限度として、これまで実効線量で100 mSvが決められていた。一方国際的には、この値として500 mSvが推奨値として示されており、当審議会としても本年1月に「国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れについて-第二次中間報告-」(平成23年1月放射線審議会基本部会)を策定し、緊急時被ばくの線量限度については、国際的に容認された推奨値との整合を図るべきである旨を放射線審議会基本部会の提言としてとりまとめたところである。
しかるに、今回の東北北関東大地震による福島原発の事故が発生し、これを制御することが、国として最重要課題となるに至った。これを受け、第113回放射線審議会総会では厚生労働大臣及び経済産業大臣から、また、第114回放射線審議会総会では人事院総裁から緊急時被ばくの線量の限度として250mSvとする諮問がなされ、これを妥当と判断した。当審議会の判断にあたっては、上記第二次中間報告の提言を踏まえ、国際的に容認された推奨値との整合が図られていることをもって妥当であるとの答申を行ったものである。

なお、国際的に容認された推奨値である500 mSv(ICRP2007年勧告において「緊急救助活動に従事する者の線量として確定的影響が発生することを回避するための線量である500mSv又は1000mSvが推奨されており、国際原子力機関(IAEA)の国際基本安全基準(改訂中ドラフト4.0)において「壊滅的状況への発展を防止するための活動に対する線量として500mSv以下」が推奨されている)は、組織影響が発症しない閾値であり、国際的にも確定的影響については、急性の障害(下痢、下血、出血等)および晩発の重篤な障害(心筋梗塞などの脈管系障害)は認められない値とされている。

わが国は緊急時対応の線量の上限値の設定基準の見直しにおいては、国際的に対応が遅れていた。本改定での上限値であっても放射線の健康影響は最小限に保たれていることを、まずは緊急事態に対応してくださっている事故現場の皆様方にご理解いただきたい。さらに本改定が、今回の大地震における人命の救助や今後の復興にとって、重要な意味をもつことを国民の皆様にご理解いただきたい。

放射線審議会委員名簿

(平成23 年3 月 現在)
石榑 信人 名古屋大学 医学部保健学科 教授
今村 惠子 聖マリアンナ医科大学 放射線医学講座 客員教授
梅田 泉 独立行政法人 国立がん研究センター東病院 機能診断開発部 細胞機能室 室長
大野 和子 京都医療科学大学医療科学部教授
甲斐 倫明 大分県立看護科学大学 人間科学講座 環境保健学研究室 教授
小松 賢志 京都大学 放射線生物研究センター 教授
酒井 一夫 独立行政法人放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
センター長
下 道國 藤田保健衛生大学 客員教授
杉浦 紳之 近畿大学原子力研究所教授
鈴木 良男 東京電力株式会社 福島第一原子力発電所 副所長
高倉 かほる 元国際基督教大学 教授
中村 佳代子 社団法人 日本アイソトープ協会 医療連携室 室長
◎丹羽 太貫 京都大学名誉教授
野嵜 美和子 獨協医科大学越谷病院 放射線科教授
平井 昭司 東京都市大学 名誉教授
藤原 佐枝子 財団法人放射線影響研究所 臨床研究部長
古田 定昭 独立行政法人日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター
核燃料サイクル工学研究所 放射線管理部 部長
桝本 和義 高エネルギー加速器研究機構 教授、放射線管理室長
山本 英明 独立行政法人日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター
原子力科学研究所放射線管理部 次長
米倉 義晴 独立行政法人放射線医学総合研究所 理事長

(敬称略、50 音順)

◎ 会長